『戦火のオートクチュール』 佐野広実 | 固ゆで卵で行こう!

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フリーライターの真理は、疎遠にしていた母と共に、祖母が遺した血塗れのオートクチュールと祖母の過去を知るためにパリへと飛ぶ。
パリにて母とその友人と共に手掛かりを追うと、シャネルのものに見える血塗れのオートクチュールから、真理たちは思いもよらぬ歴史の裏側を垣間見る。



祖母の遺品にシャネルのものと思われる血染めのスーツが。

その謎を追って母と二人でパリに飛んだ真理の現代パートと、外務省一等書記官の娘として父と共にパリに渡った祖母の千沙による過去のパート、それにココ・シャネルの視点も時折挿入され描かれる歴史ミステリ。

ココ・シャネルの謎多き人生に、ヒトラーの愛人だったエヴァ・ブラウンなど実在した人物を絡めて描かるのは、戦時下で浮かび上がる人の業と愚かさ。

特にドイツによる脅威がパリに迫る中、日本人同士でも確執が生まれ、ナチによる占領下では市民の中での悪感情の高まりが発露される描写などは胸が痛くなるものがありました。

けれどもだからこそ信念を持って行動する人々の強さが眩しく映ります。

千沙が勇気をもって行動するのは、人種を超えた一人の人間としての尊厳と愛ゆえで、思わず全てが上手くいって欲しいと願ってしまいます。

とはいえ歴史が示しているようにその結末はやはり哀しくも切ないものが…。

そして血塗られたスーツや祖母が遺していた手掛かりから、祖母の本当の姿を知った真理とその母親は何を想い感じたのでしょうか。


それにしても親子三代の確執はどうにもこうにも感情移入しにくかったんですが、同じく読まれた方はどうだったのか聞いてみたいです。

祖母と確執のあった母が、自分がそうだったからと言って、娘である真理に対してどうしてそこまで無下に扱うのか理解に苦しむものがありました。

多少の救いはあるにしても、もう少し、なんというか爽やかなものが欲しかったというのが正直なところでしょうか(^^;